平等という名の自己保身

平等という名の自己保身

自分の価値観だけで相手を説得してはいけない

年に数社ほど人事評価の新規構築や再構築に関わっているが、構築時に制度の面白さと難しさを真に理解できる人は本当に少ない。だからこそ、構築にある程度の時間を割くのだが、大体の経営者は「そんなに曖昧な制度で大丈夫なのか」とどこかで不安になる。それはどこかで人事評価というツールを使って相手を「説得」しようとしている側面があるからだ。

公正公平を求めることは重要だが、求めれば負担の大きい制度になるし、世の中「真の公平」なんてありえないからだ。世の中は理不尽なものである。コロナにワクチンに禁酒に・・・も同様で、何が正しいかなんて判断はつかないし、よくよく考えれば「真の公平」があり得ないことくらい、多くの会社の従業員もこれまでの人生で理解している。。。それでも、不満が出るのは、誰だって皆自分の都合を優先したいからだ。

では、そんな中で組織は何を目指すのか・・・

いつも説明するのは、【「真の公平」は実現できない、目指すのは「公平感」ですよ】

相手が公平と感じたら公平。不公平だと思えば不公平。この上司が言うからしゃーないとしぶしぶ納得するのも、ほぼ公平なのだ。

結局、経営者が公平さを求めすぎることは、一見従業員思いのように思われるが、そのアウトプットは自己満足・自己保身になりやすい

公平さを求めて賞与金額がいつも一律であったり、フレックス制度、テレワーク制度は全員に適用できないから不公平だと考えて取り組まなかったり。

・・・これって公平?

経営者や幹部クラスが「嫌われたくない」「自分は精一杯考えた末の結論なんだ」と自分で自分を納得させて、従業員を説得しているだけで、従業員の気持ちは置き去り・・・

そうやって経営してきた結果の「組織」になってしまうのがもったいないと、つくづく思う。

何度もコンサルティング先でいうのだが、経営に「正解」なんてないのと同じで、制度にも「正解」なんていない。もっとも成果に近い、もっとも確からしい、もっともみんながハッピーになりそう・・・これらを求めて判断することが大事だと思う。

説得より納得を目指すためのダイバーシティ

従業員「説得」をしようとしている企業は多い。人事評価制度で上司が自分の考えを受け容れさせようと「説得」することもそうだ。結果や理屈も大事だが、人間には感情があるので、プロセスの中で「納得」に近づくことの方が重要なのに、説得する方が楽なこともあって、それができない。

上が言うから仕方ない・・・という説得の仕方で、下の人に説明するのもそうだ。事実はそうかもしれないけど、それを言われた下の人はそのことに納得するのだろうか。

結局これも「私は悪くない」と自己保身なだけだと私は思う。

でも、相手が納得する対話をするためには、やはり「共感力」が低いと難しい。

多様な価値観の人材が集まるからこそ、自分の考えを持ちながら、相手の異なる考え方や気持ちを受け止める力が重要になる。この過程で「共感力」が養われてほしい(と思う)。

そして、その対話ツールとしての人事評価を上手に運用するためには、粘り強い運用支援が重要。これまでの経験から言うと、2~3年くらいじっくり研修したり、対話したりすると、自然と「相手を説得しちゃいけないよね、正しく評価制度を使えば個人の能力を伸ばし、会社の業績につながるよね」という言葉が出てくる。この瞬間は「世の中白黒じゃない、グレーもあるからうまく受け止めていこう」という前向きな考え方に変わったときともいえる。

ルールや制度は毒にも薬にもなるんだから、上手に活用することが大事ですよ。

つくづく、プロセスが重要だよね。と、心の底から思います。

「対話」や「1on1」とか言葉が先行しがちですが、説得モードの上司や経営者がそれやっても効果ないですから。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です